「ひかりごけ」事件 難破船長食人犯罪の真相 | 本とか映画とか音楽とか

「ひかりごけ」事件 難破船長食人犯罪の真相

やっと、本の記事。


「ひかりごけ」事件 とは。

太平洋戦争中、真冬の知床で難破した船の船長が、やっとこさ逃げ込んだ番屋で一人の乗組員と2ヶ月暮らし、先に餓死したその乗組員を食べて生き延びた というほんとにあったおはなし。

「ひかりごけ」とは、この事件を元に武田泰淳によって書かれた小説と戯曲の合作。

あくまで「元にして」だから、事実とは異なるわけだ。

船長は、ほんとに乗組員を食ったらしい。でも、殺してはいない。

もちろん、食うために、死ぬように仕向けたわけでも、ない。

この、「ひかりごけ」事件 のほうは小説ではなく、著者が船長(平成元年 没)に直接取材して話を聞いて、周りの人たちにも取材を重ねて、資料も集めて作った本。

以前出した「裂けた岬」と、「知床に いまも吹く風」の一部を再録してあるとのこと。

前半が、裂けた岬部分なのかな?船長の独白が続く。根気よく、15年かけて引き出した船長の話。遭難当時の記憶。生々しい写真と並ぶと、あぁ、ほんとにあったことなんだな とひしひし思う。

「ひかりごけ」を数年前に読んだとき、実話を元にして といわれても、ピンとこなかった。

やっぱり、事実は小説よりも奇なり だ。

おどろおどろしい描写とか、血なまぐさいシーンとかなくたって、じわじわと恐怖が染み込んでくる。

でも、船長が恐いっていうんじゃないんだなぁ。戦時中で、食べ物もなくて、ほんとに人肉しか食べるものがなくなって、そんな状況に置かれたら って想像するのもツラい。

しかも生きて帰って、周りから白い目で見られて、陰口たたかれて、さらに自分の事件が元になった小説が売れちゃって(しかもそれが真実だと思われちゃって)、そんななか50年近く生きてきたのって、どんな感じだったんだろう。

どんな感じもなんも、想像しただけでなんか言うのはばかられるよなぁ。

現代に生まれついて普通にごはんが食べられるって、ありがたいなぁ。





合田 一道
「ひかりごけ」事件―難破船長食人犯罪の真相
新風舎文庫
武田 泰淳
ひかりごけ
新潮社文庫

※映画化もされてるようだけど、未見。そのうち見てみようかな。